令和6年度 保健講話を開催しました
令和6年10月15日(火)7校時「対応の原点として、現代に生きる武術」という演題で、武術研究家 甲野 善紀 氏による保健講話を開催しました。
2005年の朝日新聞社主催のオーサー・ビジットの講師で、宮崎県の中学校を訪れた際に、生徒から「なんのために勉強するのですか」という質問を受けた際に、「勉強は良い大学に入るためとか、良い仕事に就くためにやるのではなくて、一番の理由はバカな大人、ズルい大人に騙されないためなんだ。社会に出ると本当にバカな大人やズルい大人がたくさん居るからね」と答えたエピソードから、当時よりも現代は社会が変化して、ますます若い世代が生きづらい世の中になっていること、何が事実か、世の中がどうなっているのかを自分で調べないと、ただ流されているだけになりかねず、学生は自分の頭で考えて人生を拓いていって欲しいという内容に始まりました。
実際に身体をつかって、小柄な甲野氏が腕を払ってくる相手に対して、反応の追いつかない動きで相手に触れる、腕力や大きな筋力ではなく肩の使い方で簡単に人を引き上げて立たせる動き、寝ている人を抱き起こす動きなどの実演がありました。多くのスポーツ選手や介護関係者が関心を寄せている甲野氏の身体運用を実際に見ることが出来ました。
単純な反復練習をするだけでは身につかない動きで、工夫次第で身体には可能性があることや、病気やケガの治療法で、医療が普及した現代では非常識と思われる方法でも効果のある方法が多くあることなど、多岐にわたりました。
後半には、山元 加津子氏(元:石川県の特別支援学校教諭 映画『しあわせの森(インタビューや著書を通して、「サムシング・グレート」について深く掘り下げる。ドキュメンタリー映画 2023年公開)』や文筆・講演・写真・イラストを通して子供たちに対する理解を訴える活動をしている)について、紹介した。山元氏が電車で偶然出会った暴力団員らしき人物の、一触即発の場面で、特別支援学校の児童のパニックを収めるように相手を抱きしめて優しく声をかけてその場を収め、暴力団員が涙を流したエピソードの録音音声で、勉強が出来ることや、体力が勝っていること、社会的地位等とは違う、甲野氏が人として尊敬して止まない人物について、人間としてのあり方や優しさについて語りました。
【体験稽古会 剣道場】
希望者による体験稽古会を開催しました。
剣道部・バスケ部を中心に、実際に技を受けて、競技スポーツとは違う早さの感触や、コンタクトプレイの威力を体験しました。
身体の思議と、技のすごさに驚きました。後半は続々質問が出て、色々な動きを体験しました。
勉強の意味を考えさせられた、「常識」と思っていることが実際と違うこともあると気がついた、身体の実践に興味を持ったという感想が多くありました。また、山元加津子さんのエピソードで、甲野先生の尊敬する人は、強くて優しい人なのだと思った。自分も強く優しくなりたいという声もありました。
講師プロフィール
1949年東京生まれ。武術研究者。20代の初めに「人間にとっての自然とは何か」を探求するため武の道に入り、1978年に「松聲館道場」を設立。以来、剣術、抜刀術、杖術、槍術、薙刀術、体術などを独自に研究する。2000年頃から、その技と術理がバスケットボール(進学校の桐朋高校の活躍)、野球(引退を囁かれていた桑田真澄投手の最小防御率獲得)、卓球(無名だった平野早矢香選手の日本選手権優勝)などのスポーツに応用されて成果を挙げ、その他にも、楽器演奏や介護、ロボット工学などの分野からも関心を持たれるようになった。2008年以降、フランスやアメリカから日本武術の紹介のため招かれて講習を行う。2009年から森田真生氏と「この日の学校」開講。
甲野氏の術理や思想に影響を受けた漫画やゲーム作品が多くあり、「バガボンド」の作中の沢庵和尚の思想としてセリフに引用されている場面は有名。非公式では「黒子のバスケ」の正邦高校のモデルや、「炎炎ノ消防隊」に登場する術理など、多岐に影響を与えている。
テレビ番組は「徹子の部屋」(2004)、「ようこそ先輩」(2005)、「笑っていいとも増刊号スペシャル」(2008)、「あさイチ」(2016)、「趣味どきっ! 古武術に学ぶ体の使い方」(2022)など人気番組に数多くゲスト出演。朝日新聞オーサービジット講師等、教育文化事業の講師も務める。
著書に『剣の精神誌』、『自分の頭と身体で考える』(養老孟司氏との共著)、『古武術に学ぶ 子どものこころと身体の育てかた』『身体は考える』(方丈遼雨氏との共著)など多数。